Quantcast
Channel: おたくま経済新聞 »うちの本棚
Viewing all 41 articles
Browse latest View live

【うちの本棚】161回 黄金バット/一峰大二(原作・加太こうじ)

$
0
0

黄金バット「うちの本棚」、今回ご紹介するのは一峰大二版『黄金バット』です。

怪獣が多く登場する本作は、ある意味一峰大二らしい作品のひとつと言っていいでしょう。月刊誌ではなく週刊連載されたということも本作の内容が充実している理由でしょうし、一峰大二の代表作といえる仕上がりになっていると思います。

【関連:160回 ちびっこ怪獣 ヤダモン/永井 豪(原作・うしおそうじ)】
 

本書はテレビアニメ『黄金バット』の放映に合わせてコミカライズされた一峰大二の作品である。
『黄金バット』自体は昭和5年に制作された紙芝居が元になっており、その後時代の流れに合わせてデザインや設定も変わったが、昭和42年に放映されたテレビアニメでは、アトランティスの遺跡から復活し、世界、いや宇宙を征服しようとするナゾーと対決する。前年上映された実写版映画の設定もその設定を踏襲しているが、アニメの企画が先行し、実写版の設定に流用されたようである。実際本コミカライズ作品も実写映画の封切りに合わせて連載が開始されているが、設定はアニメ作品を踏襲している。

また月刊誌『少年画報』でも井上 智によるコミカライズ版が連載されている(こちらの連載期間はアニメ放送と同じ)ほか、昭和20年代の絵物語をまとめた単行本(桃源社)も昭和50年に刊行されていた。

原作の加太こうじは紙芝居版にかかわった人物で、アニメ版では監修としてクレジットされている(原作のクレジットは紙芝居版で初めて「黄金バット」を描いたとされる永松健夫であり、絵物語『黄金バット』の著者でもある)。とはいえアニメ版の基本設定・ストーリー自体はアニメ制作の「第一動画」によって作られたもの(本単行本1巻の巻末で加太が「私の紙芝居をテレビ用のアニメ映画にした」と記しているが、狭義では第一動画のオリジナル作品と言っていいだろう)。当時の流行からかアニメとはいえ怪獣の登場が頻繁であるのも特徴だろう。その点コミカライズ版『ウルトラマン』も担当していた一峰大二の起用は正解だったといえるだろう。

一峰大二のコミカライズ作品は元となる映像作品に登場するキャラクターと全く似ていないキャラクターが描かれているというのがひとつの特徴といっていいと思うが、実写ではなくアニメ作品が元となる本作でも、アニメ版のキャラクター設定は全く無視しているかのような登場人物たちが描かれている(もちろん主役ヒーローである黄金バットは例外ではあるが)。

昭和40年代のコミカライズ作品についていえば、メディアミックスというビジネス上の効果はともかく、ホームビデオやカセットテープレコーダーも普及しておらず、映像としても音源としても作品を保存しておくことのできなかった視聴者が、楽しめる媒体のひとつであったことは事実で、その意味で元作品とは全く異なるキャラクターが描かれているという一峰大二のコミカライズ作品は個人的には違和感があった。正直、一峰大二のコミカライズ作品が楽しめるようになったのは元作品が古典になってからのことである。

今回読み直してみて改めて感じたことは、やはり怪獣の描写が秀逸なこと。言い換えれば『黄金バット』ではなく『ウルトラマン』でもよかったという仕上がりである。また微妙な描写をコマ割りを細かくして描くなど、表現の実験も行っているふしも見られる。全体的には謎が謎を呼ぶ展開など、週刊誌連載という特徴をいたした構成で飽きさせない出来になっている。一峰大二の月刊誌掲載コミカライズ作品と比べてみると、本作は一線を画す仕上がりになっているといえるだろう。

初出:少年画報社「週刊少年キング」昭和41年51号~昭和42年52号

著者名/一峰大二(原作・加太こうじ)
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/
シリーズ名/STAR COMICS 懐まんコミック
初版発行日/1990年9月20日(1、2巻共)
収録作品/黄金バット:第1巻・黄金バット復活、バキュアム、ビッグ・アイ、物体X・アドド、青い炎の国(前編)、第2巻・青い炎の国(後編)、怪獣ベム、怪獣ベムPART2、1万年前の怪獣ウーラ

黄金バット1-一峰 黄金バット2-一峰

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/


【うちの本棚】162回 妖怪人間ベム/田中 憲

$
0
0

妖怪人間ベム-田中「うちの本棚」、今回取り上げるのは「はやく人間になりたい」のセリフも有名な『妖怪人間ベム』です。前回取り上げた『黄金バット』とは第一動画つながりともいえますね。

コミカライズ版『妖怪人間ベム』はオリジナル色の強い作品で、コミック版だけでも十分に楽しめる作品に仕上がっています。

【関連:161回 黄金バット/一峰大二(原作・加太こうじ)】
 
本作は第一動画制作による異国情緒溢れるホラーアニメ『妖怪人間ベム』のコミカライズ作品。アニメ版は韓国のテレビ局が制作に参加しており、キャラクターや背景など、それまで馴染んできた国産アニメとは一線を画する雰囲気が特徴でもあった。製作者の談によれば逆輸入といってもいいものだったという。

そのコミカライズ作品は田中 憲によって講談社の「ぼくら」の別冊付録「テレビコミックス」に連載されたわけだが、田中 憲はのちの田丸ようすけである。単行本巻末の作者のコメントによれば、田中は東映動画の出身であり、アニメ作品のコミカライズに抜擢されたのもそのあたりの理由もあったのかもしれない。

コミカライズ版『妖怪人間ベム』は、アニメ作品を元にしているが、当初はガリ版刷りの企画書程度の素材しか提供されなかったらしく、アニメ本編では採用されなかった妖怪人間たちの誕生エピソードが描かれるなどオリジナル色の強い仕上がりになっている。そのため、コミカライズ版でも途中から「人間になるため」に悪と闘っていることになるが、誕生エピソード自体は「悪と闘う妖怪人間」として生れたことになっている。

ちなみに、アニメ版の設定では17~18世紀に作られた人工生命の細胞がのちに成長したものとされ、コミカライズ版では戦争中にドイツの科学者によって作られたことになっている。いずれにしろ人に作られたものであり、そのアイデアの元はホムンクルスにあると言っていいだろう。

田中は白土三平に影響を受けたと語っていて、スピード感のある作画にその印象を残している。とくにベロの描写では、白土三平の少年忍者を彷彿とさせる感がある。

アニメ作品ではヨーロッパ風の町並みなども印象に残るが、コミカライズ版では主に日本を舞台にしていて、山間部での描写が多い。

前述したようにオリジナル色の強い本作は、アニメ作品のイメージ通りではないが、妖怪人間を主人公にしたアナザーストーリー的に楽しめる作品と言っていいだろう。

コミカライズ版連載当時は、雑誌掲載後に単行本化するという流れは確立しておらず、本作も単行本にまとめられたのは2002年。実に34年を経てからである。最初のB6版単行本には携帯ストラップの「おまけ」が付いていた。

初出/講談社「ぼくら」(昭和43年8月号~昭和44年4月号・別冊付録「テレビコミックス」)
書誌/講談社・B6版(2002年5月23日)
       文庫版(2010年)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】163回 新造人間キャシャーン・PLATINUM.SIDE/タツノコプロ

$
0
0

キャシャーン-タツノコ「うちの本棚」、今回はタツノコプロの『新造人間キャシャーン』のコミカライズ版を取り上げます。

『新造人間キャシャーン』には複数のコミカライズ作品があり、今回取り上げるのはそのうちのエースファイブコミックス版と「テレビマガジン」連載版をカップリング収録したものです。

【関連:162回 妖怪人間ベム/田中 憲】
 
タツノコプロ制作の『新造人間キャシャーン』には複数のコミカライズ作品があったが、放映当時に単行本化されたのはエースファイブコミックス版の書き下ろし作品のみだった。2004年になって英知出版から、実写映画の公開に合わせる形で、エースファイブコミックス版と「テレビマガジン」連載版のカップリングと「冒険王」連載版が全2巻で刊行された。本書はその前者であるカップリング版である。
 エースファイブコミックス版は全2巻で刊行されたが、1巻と2巻では作画担当者が違っており、1巻では渡辺福男のほか、若宮幸夫、大辻やすたかの3名が、2巻では島おさむがクレジットされている。共通していえる印象は人物メインで描かれていて、背景は最小限に抑えられている点である。おそらくアニメーター出身者がコミックの作画に起用されたことも理由なのだろう。そのあたり「テレビマガジン」版の秋本シゲルの作画と比べるとよくわかる。
 エースファイブコミックス版、「テレビマガジン」連載版共に同じエピソードを取り上げている部分があり、元になったシナリオをどうコミックとして処理しているかも本書の楽しみ方のひとつだろう。

書 名/新造人間キャシャーン・PLATINUM.SIDE
著者名/タツノコプロ
出版元/英知出版
判 型/B6判
定 価/2600円
シリーズ名/トラウママンガブックス
初版発行日/2004年11月12日
収録作品/エースファイブコミックス版、「テレビマガジン」連載版

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】164回 新造人間キャシャーン・GOLD.SIDE/浅井まさのぶ版

$
0
0

キャシャーン-浅井「うちの本棚」、今回は浅井まさのぶ版『新造人間キャシャーン』を取り上げます。

複数あるコミカライズ版の中でもアニメオリジナルの雰囲気をもっとも再現している点で、決定版ともいえるでしょう。

【関連:163回 新造人間キャシャーン・PLATINUM.SIDE/タツノコプロ】
 
秋田書店の「冒険王」に連載された、浅井まさのぶ版のコミカライズ作品が本作である。

連載は1973年~1974年だが、単行本化されるのはこの英知出版「トラウママンガブックス」が初めてだった。実写版映画の公開というきっかけがなければいまでも単行本化のチャンスがなかったかもしれないと思う。
『新造人間キャシャーン』にはほかに、講談社「テレビマガジン」連載版やエースファイブコミックス描き下ろし版とコミカライズ作品があるわけだが、本作、浅井まさのぶ版がもっともテレビ放映オリジナルを忠実に再現しているのではないだろうか。またページ数的にも取り上げたエピソードを再現するのに十分な量があったのだと思う(実際にはアニメの進行とコミック版の進行は同時なので、厳密には“再現”という言葉は当てはまらないが)。

本書の巻末には浅井の「あとがき」が収録されていて、当時の思い出を語っている。連載開始にあたりタツノコプロでデッサン力を確認されたり、キャシャーンの画はタツノコ側で多少の修整が加えられたとのことである。それでもアニメのキャラクター設定に近い描写を基本に描かれた浅井版は、ビデオなど映像としてテレビ放送を残せなかった当時の子供たちには、放送後にも楽しめるメディアになっていたのは確かだろう。その意味では本作が連載終了後すぐに単行本化されなかったのは大変残念なことである。

初出:秋田書店「冒険王」1973年10月号~1974年7月号

書 名/新造人間キャシャーン・GOLD.SIDE
著者名/浅井まさのぶ(原作・吉田竜夫とタツノコプロ)
出版元/英知出版
判 型/B6判
定 価/2400円
シリーズ名/トラウママンガブックス
初版発行日/2004年11月12日
収録作品/新造人間キャシャーン「冒険王」連載版・全10話

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】165回 遊星仮面/楠 高治

$
0
0

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは楠 高治の『遊星仮面』です。

アニメ本編のキャラクターデザインを担当した作者によるコミカライズであり、アニメがそのままマンガになった感も強い本作。単行本化の機会もなく、40年の時を経て初めて単行本化されました。

【関連:164回 新造人間キャシャーン・GOLD.SIDE/浅井まさのぶ版】

遊星仮面-上 遊星仮面-中 遊星仮面-下


『遊星仮面』は1966年6月から1967年2月に掛けて放映されたテレビアニメで、本作はアニメのキャラクター設定を担当した楠 高治によるコミカライズ作品。

地球と太陽の反対側を同じ軌道で回っているピネロン星が発見され、そこに住む人々とも交流ができ、地球人とピネロン人との結婚も珍しくなくなっていたとき、ピネロンの大都市の上空で核物質を積んだロケットが爆発。それを地球からの攻撃と受け取ったピネロンが、地球に対して戦争を仕掛ける。爆発したロケットに乗っていた地球人の息子で、ピネロン人の母を持つピーターは地球のピネロン人収容政策によって母とも離ればなれにされ、ソクラトン教授の家に引き取られることになった。そして、父から託されたコスチュームをまとい正義の使者「遊星仮面」となって一方的なピネロンの攻撃から地球を守りつつ、戦争を止めようとするのだった。

アニメのキャラクターを担当した作者によるコミカライズということでビジュアル的に違和感がない上に、複数の雑誌掲載も同じ作者が担当しているということも本作の特徴と言っていいだろう。また、同じエピソードを重複して描くということがないのも本作品の特筆すべきところだろう。

アニメを制作した「TCJ(現・エイケン)」の作品では、ほかにも『遊星少年パピィ』、『冒険ガボテン島』でもそれぞれキャラクター設定を担当した井上英沖、久松文雄がコミカライズを手がけていた。

このような例は案外少なく、近年では貞本義行の『新世紀エヴァンゲリオン』や中村嘉宏の『オーバーマン キングゲイナー』などがある程度だと思う。
『遊星仮面』といえば、「誰だ!」「人呼んで遊星仮面」という決めゼリフも有名だが、アニメ本編では遊星仮面をみた人々にそう呼ばれ、本人が「人呼んで~」と名乗るようになる過程も描かれているようだが、コミック版ではそれはなく、いきなり「人呼んで~」のセリフと共に登場している。

作画を担当した楠 高治はほかにも実写テレビドラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズなども手がけていた。『8マン』の桑田次郎のアシスタントを務めていたこともあり、キャラクターが似ている以外にも、シャープな描線やスピード感のあるコマ運びも影響を受けているようだ。

単行本化されないままになっていたが、アップルBOXクリエートから自費出版の形で刊行されたあと、パンローリングのマンガショップシリーズで複数雑誌掲載の全ての作品が全3巻にまとめられた。
「戦争を止めろ!」というストレートな主張と共に、いま読み返してみるべき作品のひとつだと思う。

遊星仮面/楠 高治(原作・仁田信夫/脚本・足立 明)
初出/集英社「少年ブック」(1966年7月別冊付録~1967年3月号別冊付録、4月増刊)、小学館「小学館ブック」(1966年8月号~1967年3月号)、小学館「小学三年生」(1966年9月号~1967年3月号)、「よいこ」「幼稚園」
書誌/パンローリング・マンガショップシリーズ(全3巻)2007年12月3日初版発行(3巻共)
   アップルBOXクリエート

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】166回 宇宙の騎士テッカマンブレード/鈴木典孝(スタジオOX)

$
0
0

「うちの本棚」、今回は『宇宙の騎士テッカマンブレード』のコミカライズ作品を取り上げます。
 アニメ作品とはかなり違った展開になっていますが、このコミック版もなかなかの名作ではないかと思います。

【関連:165回 遊星仮面/楠 高治】

テッカマンブレード

 
本作は1992年2月~1993年2月まで、テレビ東京系で放送されたタツノコプロのアニメーション『宇宙の騎士テッカマンブレード』のコミカライズ作品である。

とはいえ、アニメ作品とコミック作品の進行がほぼ同時だったため、アニメの設定やストーリー構成をコミック版に全ていかすことができず、アニメとは別のオリジナル作品といってしまっていい仕上がりになっている。

コミック版の作者である鈴木典孝はあとがきで、自分の体験からビデオなどの機器が普及していなかった時代にはテレビ放送の余韻を求めてコミカライズ作品を楽しんだというエピソードを披露しているが、ビデオも普及した本作の時代、進行上の問題だったとはいえ、テレビ放送とは全く違う展開となったコミック版は、それはそれでアリなのかもしれない。

基本設定くらいは踏襲しているのだろうと思われるかもしれないが、ラダムという地球を侵略してくる宇宙生物や、ラダムを指揮する敵のテッカマンの存在、またそのラダムから地球を守る主人公テッカマンブレードとその仲間スペースナイツの存在程度が共通しているだけで、驚いたことにスペースナイツの母体である宇宙開発機構やその長であるフリーマンの設定が別のものになっていたりする。

またコミック版の特徴としてテッカマンの乗用マシンとしてブレード以外にもそれぞれペガスを所有しており、中でもテッカマンダガーのペガスのエピソードが中盤の見せ場になっている。

アニメ版もハードな内容で名作だったと思うが、コミック版もなかなか興味深いものになっている。展開がオリジナルなだけにもう少しじっくりと描かれていたらという気がしないでもないが、スピード感のある流れで一気に読め、ラストも余韻の残るものである。

ちなみに『宇宙の騎士テッカマンブレード』はほかに講談社の「デラックスボンボン」に井上大助によるギャグタッチのコミカライズ作品も連載されていた。

初出/角川書店「月刊コミックコンプ」(1992年3月号~9月号)
書誌/メディアワークス・メディアコミックス

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】167回 宇宙の騎士テッカマンブレードII/中原れい

$
0
0

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは、前回取り上げた『宇宙の騎士テッカマンブレード』の続編『宇宙の騎士テッカマンブレードII』です。

OVA作品のコミカライズはわりと珍しいかもしれませんね。

【関連:166回 宇宙の騎士テッカマンブレード/鈴木典孝(スタジオOX)】

テッカマンブレードII


『宇宙の騎士テッカマンブレードII』は、テレビアニメ『宇宙の騎士テッカマンブレード』の10年後という設定で制作されたOVAで、3話1シリーズで2シリーズ(全6巻)制作、1994年~1995年にかけてリリースされた。

本作品はテレビシリーズ、OVAでメカニックデザインを担当した中原れいによるコミカライズ作品で、第1シリーズを漫画化している。

多少コミック版オリジナルの展開もあるがストーリー・構成はほぼOVAをなぞっており、アニメ作品の余韻を他のメディアで楽しむというコミカライズの役割を十分に果たしていると言っていいだろう。

正直なところOVA版の主要な部分を描いていて、細かいエピソードは省略している感があり、映像作品とコミック作品の情報量の差を感じてしまう。元がOVAであり、テレビ放送に合わせた連載期間ということでもないはずなので、掲載誌側にはもう少しじっくりと描けるよう環境を整えてほしかった気がしないでもない。

とはいえ本コミカライズ版が内容の薄い作品であるというわけではなく、『宇宙の騎士テッカマンブレードII』という作品の魅力を十分に伝えるものになっているのは事実で、OVAをご覧になった方なら、ぜひこのコミカライズ版も読んで欲しいと思う。いや、まだOVAをご覧になっていない人もコミカライズ版から『宇宙の騎士テッカマンブレードII』に触れてみてほしい。
 
『宇宙の騎士テッカマンブレードII』にはノベライズ版(『水晶宮の少女』)もあり、こちらはシナリオを担当した川崎ヒロユキによって書かれ、イラストはキャラクターデザインを担当した佐野浩敏が描いている。内容はOVA全6話の続編で『宇宙の騎士テッカマンブレード』シリーズの完結編となっている。

初出/バンダイ「B-CLUB」(98~113号/刊行年数不明)
書誌/メディアワークス・メディアコミックス(1995年8月25日初版発行)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】169回 伝説巨神イデオン/古城武司、池原しげと(原作・矢立 肇、富野由悠季)

$
0
0

「うちの本棚」、今回は富野由悠季監督の『伝説巨神イデオン』、ふたつのコミカライズを収録した大都社版『伝説巨神イデオン』です。

テレビ版と劇場版、ふたつのコミカライズが1冊で読めるのはなかなか欲張りな単行本といえるかもしれません。

【関連:168回 レインボー戦隊ロビン/東映コミックス】

イデオン/秋田書店 イデオン/大都社


本書はサンライズ制作、富野由悠季監督のテレビアニメ『伝説巨神イデオン』およびその劇場版映画のコミカライズ作品である。テレビ版は放映に合わせて、秋田書店「冒険王」に古城武司によってコミカライズが連載され、劇場版は公開に合わせて講談社「コミックボンボン」に池原しげとによって連載された。
単行本は古城版が82年に秋田書店「サンデーコミックス」で刊行されたあと、本書にも収録。池原版は本書が初収録である。

池原しげとの劇場版はアニメ版のシナリオをほぼトレースする印象で構成されている(アニメ版とそのシーンに登場するキャラクターが一部異なっていたりする場面がある)。劇場版アニメをコミックでもう一度楽しむという意味での役割は十分に果たしているわけだが、アニメ版の完成度が高かったために、コミック版の物足りなさを感じてしまう結果となってしまった感は否めない。もともとストーリーが複雑な作品を低年齢向けコミック誌に掲載するのだから、ある程度の要約や省略は仕方ないだろうし、その上である程度の年齢の読者にも納得のできる内容に仕上げているのは、池原しげとの力量と言っていいのだと思う。

一方、古城武司によるテレビ版コミカライズだが、これもこれで古城の苦労がうかがえる作品である。
というのも「冒険王」は月刊誌であり、毎週放送のあるテレビ版のストーリーを月一回の連載でフォローしていくのだから、およそ4回分のシナリオを1回の連載で消化することになる。かつて古城が手がけていた『超人バロム1』など、1話完結の作品であれば、その月に放送される中から1話をチョイスすればよかったが、本作ではそれはできない。
連載当初はそれでもベースとなる1話を中心にした印象だったのだが、後半になるとかなりのスピードでストーリーを消化している感がある。

そして怒濤の最終回を迎えるわけだが、連載初出ではシェリルの独白で終了していて、打ち切りとなったテレビ版ともども、ぶっち切りという印象だったのだが、単行本化の際、最終3ページを描き下ろしていた。

秋田書店「サンデーコミックス」のカバー折り返しでは、「かぎられたページで、どこまでえがきあげることができたか…とにかく一生懸命とりくみました」と作者の言葉がある。まさのその通りだったのだろうと思う。またそこまで苦労した作品であるにもかかわらず、原稿が紛失しており、本書収録には秋田書店「サンデーコミックス」を原稿としてつかっている。

ちなみに『伝説巨神イデオン』は個人的にもっとも好きなロボットアニメで、思い入れも強い。今回取り上げたコミカライズ作品もアニメ版のイメージを損なうことのないもので、ある意味アニメ版を補完する作品といえるだろう。

初出:劇場版・講談社「コミックボンボン」1982年6月号~9月号
   テレビ版・秋田書店「冒険王」1980年6月号~1981年3月号
書 名/伝説巨神イデオン
著者名/古城武司、池原しげと
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/880円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/1999年6月8日
収録作品/劇場版伝説巨神イデオン(接触編・発動編/池原しげと)、テレビ版伝説巨神イデオン(古城武司)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/


【うちの本棚】170回 勇者ライディーン/蛭田 充(原作・鈴木良武)

$
0
0

今回の「うちの本棚」は、富野由悠季、長浜忠夫両監督のロボット作品の原点『勇者ライディーン』のコミカライズ版を取り上げます。
蛭田 充により「テレビマガジン」に連載された本作は23年を経て初めて単行本化されたもので、アニメ版とは全く違う主人公のビジュアルが特徴となっています。

【関連:169回 伝説巨神イデオン/古城武司、池原しげと(原作・矢立 肇、富野由悠季)】

ライディーン/大都社


本書はテレビアニメ『勇者ライディーン』(1975年4月~1976年3月・NET系列放映)のコミカライズ作品である。

当時、『マジンガーZ』『ゲッターロボ』と、永井 豪(ダイナミックプロ)、東映動画によるロボットアニメが人気をはくし、それを追い越すものとして企画されたのが『勇者ライディーン』。結果、ロボットアニメブームが起ることにも繋がっていく。

コミカライズは講談社の「テレビマガジン」で蛭田 充により連載された。
蛭田 充のコミカライズ作品は『デビルマン』でもそうであったように、元となるアニメのキャラクター設定を敢えて無視したようなところが特徴とも言える。本作でもアニメ版の安彦良和によるイケメンキャラであるひびき洸が蛭田オリジナルのキャラに変更されている。とはいえ、美形適役シャーキンをはじめ、その他のキャラはほぼアニメに準じているので、なぜ主人公だけが変更されたのかは謎である。

ストーリーはテレビ放送されたエピソードからピックアップしてコミカライズされており、全体を通してほぼアニメ版のストーリーを楽しむことができる。

アニメ版がかなりの人気を得たにもかかわらず、コミカライズ版は連載が終了したあとも単行本化されることなく月日が流れ、23年を経てから大都社で初めて単行本化された。

書 名/勇者ライディーン
著者名/蛭田 充(原作・鈴木良武)
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/800円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/1998年10月1日
収録作品/勇者ライディーン(全14話)

初出:講談社「テレビマガジン」1975年4月号~1976年4月号、1975年夏の増刊号、1976年春の増刊号

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】171回 機動戦士ガンダム/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)

$
0
0

今回の「うちの本棚」は、現在もシリーズ作品が制作されている「ガンダム」の原点、『機動戦士ガンダム』のコミカライズ作品を取り上げます。

この作品にはいくつかの単行本がありますが、ここでは劇場版『ガンダムIIIめぐりあい宇宙』を初収録したストーリー上の完結版である大都社版を紹介します。

【関連:170回 勇者ライディーン/蛭田 充(原作・鈴木良武)】

ガンダム/大都社


本書はサンライズ制作のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放映に合わせて秋田書店の「冒険王」に連載されたものと、その後劇場公開された映画版3作目『めぐりあい宇宙』の公開に合わせて「別冊冒険王」に掲載されたコミカライズ作品を収録したものである。
「冒険王」連載のテレビ放送に合わせたコミカライズは、放映のスピードに追いつけずストーリーの中盤で終了。後半部分を劇場版のコミカライズという形で描き完結させている。

またテレビ版との設定上の違いなどが指摘されるなどして「冒険王」掲載分では数話の未収録エピソードがある上に大幅な加筆修正がほどこされての刊行となっている。

まあ、熱心な「ガンダム信者」には許せない部分はあるのだろうが、コミカライズ作品においてオリジナルの映像作品との差異は少なからずあるわけで、本書においてそこまでオリジナルとの違いを探し出して批判するのはどうかという気がしないでもない。少なくともこの大都社版ではオリジナル作品に合わせて最大限の修整が試みられているのではないかと思う。

また、連載当時、中学生以上の視聴者を意識して制作されたオリジナル映像作品と、小学生を中心に読者対象としていた「冒険王」では、その表現にも違いが出るのはいたしかたなかっただろう。コミカライズの作者、岡崎は「当時テレビがなく、オリジナル作品は見ていなかった」と後年インタビューで答えているようだが、ちょっと複雑な主人公の性格を小学生にもわかりやすいヒーロー的な表現に変えてしまっても、ある意味間違ってはいなかったではないかと思う。

確かにテレビ版のコミカライズではストーリーを追うのに精一杯という印象があり、富野作品らしい感情表現だったり、キャラクターの特徴が描ききれていなかった感は否めない。その点は残念としか言いようがないが、1話完結でないテレビ作品を月刊誌で連載していくというスタイル自体がそれを難しくしているのも確かだろう。

本作品は未収録のエピソードも含めて「マンガショップシリーズ」で再刊行されているので興味を持った方は読んでみてほしいと思うが、結果的にこの大都社版で作者として全体的にまとめ上げているので、こちらの方がスンナリと楽しめるのではないかと思う。

初出:秋田書店「冒険王」1979年5月号~1980年2月号、「別冊冒険王」1982年春の号

書 名/機動戦士ガンダム
著者名/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/960円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/1998年10月1日
収録作品/冒険王連載版7話、ガンダムIIIめぐりあい宇宙

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】172回 HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ/御祇島千明(原作・赤根和樹、サテライト)

$
0
0

「うちの本棚」、今回は『HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ』のコミカライズ作品を取り上げます。
単行本ではアニメ版資料、アニメ版監督のインタビューなども収録していて、コミカライズ作品を含めてアニメ版の資料集といった印象のある一冊です。

【関連:171回 機動戦士ガンダム/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)】

HEATGUY J


本書はテレビアニメ『HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ』の放映に合わせて、講談社の「マガジンZ」に連載されたコミカライズ作品。原作はアニメ版監督の赤根和樹と制作会社の「サテライト」、キャラクター原案は結城信輝。

コミカライズ版は4話で、1、2話はアニメ版の内容をかなり忠実にマンガ化しているが、後半の3、4話はアニメの設定を踏まえてのオリジナルな展開になっている。しかしながらアニメ版全体から見ると3分の1程度の内容でコミカライズ版は終了。基本的に1話完結のエピソードではあるが、全体を通して大きなストーリーの流れのあるアニメ版を月刊誌でコミカライズしていくのは、テレビ放送の期間内に同じスピードで進行できないのを見越して、後半はオリジナルの展開になったのかもしれない。これから、という感じの展開で終わっているのは大変残念である(かなり余韻のある終わり方でもあり、オリジナル作品として続編を描いてほしい気がする)。

アニメ版とコミカライズ版の大きな違いは主人公ダイスケ・アウローラなど主要なキャラクターがコミカライズ版の方が幼い印象があるといったくらい。オリジナルのストーリーも違和感のない展開でよくできていた。

本書ではコミカライズ作品の分量が少なかったせいかアニメ版の資料や連載開始前の予告まんが、アニメ版監督のインタビューなども収録していて、『HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ』という作品の資料集という印象もある。

あまり話題にならなかった作品という気もするが、個人的には大変好きなアニメで、もし同じようにこのアニメがお好きな人がいたら、ぜひコミカライズ版、この単行本もお読みいただきたい。アニメ版では語られなかった「HEATGUY」と呼ばれるゆえんに言及しているシーンもあります。

初出:講談社「マガジンZ」2002年10月号~2003年4月号

書 名/HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ
著者名/御祇島千明
出版元/講談社
判 型/B6判
定 価/524円
シリーズ名/マガジンZKC
初版発行日/2003年3月20日
収録作品/HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ 1~4話、J-HOTPAPER、予告まんが、アニメ設定資料、赤根和樹インタビュー

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】173回 クレオパトラ/坂口 尚(原案・監修/手塚治虫)

$
0
0

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは坂口 尚がコミカライズを担当した虫プロの劇場アニメ『クレオパトラ』です。

「COM増刊号」として刊行されて以来、単行本化されることもなく、ある意味幻の作品。坂口ファンのみならず、単行本での刊行は意味のあるものではないでしょうか?

【関連:172回 HEATGUY J ヒートガイ・ジェイ/御祇島千明(原作・赤根和樹、サテライト)】

クレオパトラ/坂口 尚


本作品は虫プロダクションの劇場用長編アニメーション『クレオパトラ』のコミカライズ作品である。

アニメ『クレオパトラ』は、「大人にも楽しめるアニメーション」を目的に、「アニメラマ」として『千夜一夜物語』に続いて制作されたもの。キャラクターデザインは小島 功が担当しており、セクシーなクレオパトラとなっている。声は中山千夏が担当した(余談だが『千夜一夜物語』で主人公を演じた青島幸男ともども「アニメラマ」で主役を演じたふたりがその後政治活動に向かって行ったのは単なる偶然なのだろうか?)。

坂口 尚はアニメーター出身でもあり、本作においてはアニメ版のキャラクターがそのまま描かれている印象で作画されている。

表2には手塚治虫の前書きが「口上」として掲載されており、「映画でしか表現しえないギャグなどをとりのぞき」とアニメとコミックの表現の違いを踏まえた上でのコミカライズであることを述べいてる。アニメでは随所に見られるパロディやギャグシーンがコミカライズ版ではカットされているのはそのためだろうが、日本の古典芸能を模したシーザー暗殺シーンもコミカライズ版オリジナルの表現に差し替えられている。

キャラクターやストーリーはアニメを元にしているわけであるが、マンガとしての表現はあくまでも坂口の力量であることは事実であり、改めて坂口 尚の漫画家としての実力を感じられる作品であるという気がする。

残念なのは、この作品が復刻はもちろん、きちんとした単行本で刊行されていないこと。
坂口 尚の初期の代表作のひとつであるだけに、今後単行本として刊行されることを切に願う。

初出/虫プロ商事「COM増刊号」(昭和45年10月5日)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】174回 マジンガーZ/桜多吾作(原作・永井 豪)

$
0
0

マジンガーZ「うちの本棚」、今回はアニメ作品のコミカライズとしてはもっとも有名な作品とも考えられる、桜多吾作版『マジンガーZ』を取り上げます。

連載当初はテレビアニメのエピソードをなぞるものでしたが、掲載誌が移り、後半に差しかかるとオリジナル色が濃くなり、結果的にオリジナル「マジンガーシリーズ」ともいえる作品へと発展していきます。その原点をお楽しみください。

【関連:173回 クレオパトラ/坂口 尚(原案・監修/手塚治虫)】

桜多版マジンガーZ-1 桜多版マジンガーZ-2 桜多版マジンガーZ-3


本作はテレビアニメ『マジンガーZ』の放映に合わせて、集英社の「別冊少年ジャンプ」に連載されたあと、秋田書店の「冒険王」に掲載誌を移して連載されたコミカライズ作品である。基本的にアニメのエピソードを元にしているが、後半になるにつれオリジナル色が強くなっていき、続編である『グレートマジンガー』『グレンダイザー』と進んでいくと、桜多吾作オリジナル作品という印象ともなっていく。

単行本は当初「秋田サンデーコミックス」で刊行され、絶版のあと本書、続いて双葉社からA5判としても刊行された。現在では「マンガショップシリーズ」で全3巻として、それまでの単行本には収録されなかった、ボスボロット登場エピソードなども含めた新編集版が刊行されている。

本作では、永井 豪の原作版に比べて、主人公・兜 甲児をはじめ主要なキャラクターが若干幼い印象に描かれている。そのぶんギャグシーンも入れやすかったのかギャグシーンが散見できる。しかし、特に後半ではシリアスでハードな展開もあり、ギャグとシリアスがいいバランスで描かれている。

またテレビ版のエピソードに加えて劇場公開版の『マジンガーZ対デビルマン』、『マジンガーZ対暗黒大将軍』も描かれ、連載エピソードに組み込まれて収録されている。テレビアニメ版のイメージをトレースすることに加えて、桜多版オリジナルの要素も楽しめるという点で、本作はコミカライズ作品として成功した例ではないだろうか。

今回は朝日ソノラマの「サン・ワイド・コミックス」版として取り上げたが、この「サン・ワイド・コミックス」は、当時コンビニ販売を中心に各出版社で刊行され始めたB6版単行本(現在のペーパーバックコンビニコミックとはまた別のもの)を意識してスタートしたシリーズだったと思う。通常の新書判単行本よりサイズが一回り大きく、ページ数も2冊分程度というボリュームで、旧作・名作の刊行が盛んに行われた。「サン・ワイド・コミックス」も当初は新書判の「サン・コミックス」の絶版作品を収録するかと思われたが、コミカライズ作品やドラマ化、アニメ化原作作品などヒーロー路線が中心になり、石森章太郎の『人造人間キカイダー』『イナズマン』などと並んで本書の「マジンガーシリーズ」も刊行された。ちなみに永井 豪の原作版『マジンガーZ』も同じ「サン・ワイド・コミックス」で刊行されている。
本書が刊行された当時は「秋田サンデーコミックス」も古書店での入手が難しい状況になっており、読みたいが手に入らないファンにはうれしいものだった(原作版は「講談社KC」など繰り返し刊行され入手しやすい環境にあったが、コミカライズ版は半ば忘れられていた時期ではなかったかと思う)。

原作とは一線を画し、本来元となるアニメ版とも一味違う桜多吾作版「マジンガーシリーズ」、その原点ともいえる本作『マジンガーZ』はロボット作品が好きな人はもちろん、まだ読んだことがないという人に読んでほしい作品である。

初出:集英社「別冊少年ジャンプ」1972年12月号~1973年9月号
   秋田書店「冒険王」1973年9月号(予告まんが)~1974年9月号

書 名/マジンガーZ(全3巻)
著者名/桜多吾作
出版元/朝日ソノラマ
判 型/B6判
定 価/第一巻・750円、第二、三巻・690円
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
初版発行日/第一巻・昭和62年11月20日、第二巻・昭和62年12月21日、第三巻・昭和63年1月20日
収録作品/第一巻誕生編・マジンガーZ誕生の巻、消滅作戦、デイモスF3は悪魔の落とし子、大回転攻撃、飛行魔獣デビラーX1、襲撃ストロンガーT4、ホルゾンV3、ジンライS1、ホーガスD5、マジンガーZ対デビルマン、ミネルヴァX、カーマK5、第二巻激闘編・グラナダE3、Drヘルの野望、暗黒大陸のマジンガーZ、ブローグンG3、チップカモイ、Drヘル大攻略、デスクロスV9、ジェノバM9、デビルチーフA7、第三巻完結編・RI(リー)計画の秘密、ダイモスΣ8とメドルーサエゼン、ピグマン子爵の巻、マジンガーZ対暗黒大将軍、闘え!!Drヘル、Drヘルの最期

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】175回 グレートマジンガー/桜多吾作(原作・永井 豪)

$
0
0

桜多版グレートマジンガー-1「うちの本棚」、今回は桜多吾作版「マジンガーシリーズ」第二弾『グレートマジンガー』を取り上げます。朝日ソノラマの「サン・ワイド・コミックス」で全二巻で刊行されたもので、同じ作品の単行本の中でもレアなものになるかと思います。

【関連:174回 マジンガーZ/桜多吾作(原作・永井 豪)】

桜多版グレートマジンガー-1 桜多版グレートマジンガー-2


本書はテレビアニメ『グレートマジンガー』の放映に合わせて、秋田書店の月刊誌「冒険王」に連載された作品で、初単行本化は、秋田書店の「サンデーコミックス」、のちに本書、その後、双葉社でも刊行されている。

ご承知のように永井 豪原作の『マジンガーZ』の続編という位置づけでアニメは制作され、本作品もその流れに沿って「マジンガーシリーズ第二弾」とされるわけだが、『マジンガーZ』後半で見せた桜多オリジナルの展開は連載開始から際立っている。とくに「非情な戦士」という剣 鉄也のキャラクターは第一話で強烈に印象づけられることになる。

また、グレートマジンガーのパートナーロボット、ビューナスAに搭乗する炎ジュンは、一、二話では普通の肌の色として描かれており、第三話で自分の肌の色をコンプレックスに感じているというエピソードが描かれることで、褐色に変更される(アニメ版でも永井 豪の初期設定では白人とのハーフだったということなので、桜多版はそれを踏襲していたのかもしれない)。

本作品で特に印象に残るのは、グレートマジンガーが量産されるというエピソードだろう。と同時に、どちらかいえば低年齢層向けの「冒険王」の読者にはちょっと難しいとも思えるハードな展開にストーリーは向いていく。ミケーネ帝国の魔手から世界を守っているはずのグレートマジンガー(剣 鉄也)や科学要塞研究所が、日本政府の裏切りともいえる行為でゲリラ活動せざるを得なくなるなど、後半はアニメの設定を元にした桜多吾作
オリジナル作品と言っていいものになっている。また『マジンガーZ』後半で登場したみさとが再登場しているが、その最期も衝撃的なものとなっている。

アニメ版では『マジンガーZ』の兜 甲児より、剣 鉄也は大人の雰囲気で描かれていたわけだが、桜多版は、多少年上という感覚はあるものの、アニメ版のイメージからすると幼く描かれている。これはジュンも同様だ。

本書第二巻の冒頭では、劇場公開された『グレートマジンガー対ゲッターロボ』のコミカライズ作品が収録されているが、こちらもアニメ版とは違った展開を楽しめる作品になっている。
 今回初出としてネットで確認した講談社「テレビマガジン増刊」としたものを記載したが、同誌では石川 賢によるコミカライズが掲載されていたと記憶しており、もしかしたら初出誌は違っているかもしれない。

ちなみに、桜多吾作は同じ『グレートマジンガー』を講談社の「おともだち」「ディズニーランド」にも連載していたようだが、こちらは単行本化されていないのではないだろうか。

初出:秋田書店「冒険王」1974年10月号~1975年9月号、
   講談社「テレビマガジン増刊号」1975年4月15日

書 名/グレートマジンガー(全2巻)
著者名/桜多吾作
出版元/朝日ソノラマ
判 型/B6判
定 価/各690円
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
初版発行日/第1巻・昭和62年11月20日、第2巻・昭和62年12月21日
収録作品/グレートマジンガー

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】176回 UFOロボ グレンダイザー/桜多吾作(原作・永井 豪)

$
0
0

「UFOロボ グレンダイザー」表紙今回の「うちの本棚」は、桜多吾作版「マジンガーシリーズ」最終作『UFOロボ グレンダイザー』を取り上げます。

オリジナル色が濃厚で、もはや同じキャラクター、同じロボットが登場する別作品という印象も強い本作。しかしその内容は「トラウマ作品」とも言えるほどの圧倒的なものとなっています。

【関連:175回 グレートマジンガー/桜多吾作(原作・永井 豪)】

桜多版グレンダイザー01 桜多版グレンダイザー02


本書はテレビアニメ『UFOロボ グレンダイザー』の放映に合わせて、秋田書店の「冒険王」に連載されたコミカライズ作品で、単行本は秋田書店「サンデーコミックス」、本書、双葉社などで刊行された。
いわゆる「マジンガーシリーズ」の3作目で、桜多版としては最終作。
アニメ作品自体は、劇場公開された『宇宙円盤大戦争』を元にして、キャラクターやメカのデザインを変更してテレビシリーズ化している。『マジンガーZ』『グレートマジンガー』に共通するのは兜 甲児が登場していることくらいで、「マジンガーシリーズ」とはいわれているがストーリー上の関連は薄い。

桜多版では『グレートマジンガー』以上にオリジナル色が濃厚で、同じキャラクター、同じロボットが登場する別作品といってもいいくらい。ここまでくるとコミカライズと言っていいのか疑問でもあるが、桜多版のファンは少なくない。
桜多版ではストーリー中盤に弓さやかもレギュラーキャラクターとして登場。アニメ版に登場するマリアも後半になって描かれるが、アニメ版と違って影は薄い。
また桜多版ではグレートマジンガーと闘ったミケーネ帝国がストーリーの重要な要素として登場している。
後半に入るとストーリーの盛り上がりはますます激しくなり、クライマックスでは桜多版でアニメ作品を作ってほしいと思うくらいの内容が描かれている。詳しい内容は未読の方のために伏せておくが、ダイナミック・プロ系のロボットマンガにおいては、石川 賢の『ゲッターロボ』シリーズにも匹敵する作品と言っていいだろう。

桜多は「冒険王」と平行して講談社の「おともだち」においても『グレンダイザー』を連載していたようだが、これも『グレートマジンガー』と同様に未単行本化だと思う。

初出:秋田書店「冒険王」1975年10月号~1977年3月号

書 名/UFOロボ グレンダイザー
著者名/桜多吾作
出版元/朝日ソノラマ
判 型/B6判
定 価/第一巻・690円、第二巻・660円
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
初版発行日/第一巻・昭和63年2月20日、第二巻・昭和63年3月31日
収録作品/UFOロボ グレンダイザー

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/


【うちの本棚】177回 キューティーハニー/石川 賢(原作・永井 豪)

$
0
0

キューティーハニー「うちの本棚」、今回はダイナミック・プロつながりで石川 賢の『キューティーハニー』をご紹介いたします。

最初の単行本は若木書房の「コミックメイト」で刊行されましたが、異装版や発行日の謎のあるもの。うちの本棚にあるのは昭和51年2月1日発行の6刷。

【関連:176回 UFOロボ グレンダイザー/桜多吾作(原作・永井 豪)】

石川版キューティーハニー


本作品は、テレビアニメ『キューティーハニー』の放送に合わせて連載された石川 賢によるコミカライズ作品である。また若木書房版では「キューティー」ではなく、「キューティ」となっているのが特徴。ちなみに昭和54年にカバーイラストを変更した新装版が「初版」として再刊行されているが、オリジナルは今回掲載したもの(6刷ですが。さらに言えばこの6刷も発行日の違うものが存在しているようで、実際に何回増刷されたかは定かではない)。
単行本は若木書房以後、大都社(単独での刊行と『キューティーハニーF』との合本と複数回の刊行)、マンガショップなどから刊行されている。

永井 豪原作の一連のアニメ作品(『マジンガーZ』『デビルマン』『キューティーハニー』)では、アニメ作品と原作コミックで世界観や設定、登場キャラクターが微妙に違っていたのはご承知のことだろうが、個人的にも当時から原作とアニメは別作品的な認識があった。
その意味で、原作コミックではなく、アニメ作品の設定の元に描かれた石川 賢版のコミカライズも「もうひとつの『キューティーハニー』」という捉え方で手にした記憶がある。ことに、書店の書棚にならんだ背表紙に「キューティー」ではなく、「キューティ」と表示されているところも、永井 豪原作コミックとは別物という印象を強くしていたような気がする。
ダイナミック・プロ系コミカライズ作品の特徴とも言える、当初はアニメ作品のエピソードを取り上げつつ、オリジナル作品のような展開になるというのは、案外この石川 賢版『キューティーハニー』から始まったのかもしれない。もともとの原作者が身近にいるということも、コミカライズ担当者の自由度を上げた理由のひとつなのだろう。アニメ版に登場するパンサークロー側のキャラクターデザインにも石川は参加していたと思うので、その点からも石川オリジナル色が出しやすかったのかもしれない。

正直な話、石川 賢は女性キャラがあまりうまくない。主人公である如月ハニーの魅力が『キューティーハニー』の魅力の殆どといっても過言ではないこの作品は、石川にとってけっこうハードルの高いものではなかったかという気がしないでもない。その意味では石川作品のターニングポイントとなったのではないだろうか。
結果的に、アニメの設定の上に描かれてはいたが、石川オリジナルの「キューティーハニー」というイメージとなった本作。個人的には永井 豪原作版、アニメ版、石川版と3つの『キューティーハニー』があるような認識となっている。それだけ石川作品としての色が出ているインパクトのある作品に仕上がっていたということだろう。
まだ読んだことがないという方は、ぜひご一読を。

初出:秋田書店「冒険王」1973年11月号~1974年4月号、「別冊冒険王」1973年11月号~1974年2月号

書 名/キューティーハニー
著者名/石川 賢
出版元/若木書房
判 型/新書判
定 価/
シリーズ名/コミックメイト
初版発行日/昭和49年8月20日
収録作品/ハニーちゃん登場の巻、ツインパンサーの巻、イーグルパンサーの巻、幻術使いの巻、妖剣ものほし竿の巻、アトミックパンサーの巻、ジェットパンサーの巻、魔女ジルの巻

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】番外編 筆者のカオス本棚を初公開

$
0
0

うちの本棚-01今回の「うちの本棚」は、夏休みということで番外編としてうちの本棚を公開してみようと思います。
いや、自分でも嫌になるくらいのカオスぶりでw

【関連:177回 キューティーハニー/石川 賢(原作・永井 豪)】

うちの本棚


マンガに限らず、本を集めている方の悩みといえば、その本をどのように収納するかということに尽きるのではないでしょうか?
以前、実家にいたころは車庫を改造した物置に、事務用のスチール棚を入れ収納していたので、実家を出たいまもその棚を使っているのですが…。収納にはいいものの重量があるのが難点ですな。

最近ではホームセンターでもそこそこの書棚が安く売られているので、そろそろガタの来た木製の書棚を入れ換え始めています。

現在、2DKの部屋に本棚が15本。本棚の上にカラーボックスが合計4本。その上に外にレンタルボックスを借りているのですが、それでも納まらない本が積まれている現状は、改めて、狂気の沙汰かとw

実は、この連載の中で取り上げた単行本の一部は、表紙画像や発行日のデータを残して処分したものもあったりします。
それでも残っている本たちは、本当に好きなものか、整理のついていないものといえるでしょう。
まあ、マンガばかりでないのが痛いところでもありますね。
一時期文庫本にも凝ってしまったので、絶版文庫の山があったりもします。

ところで、こんな本の山の中で、一緒に整理を手伝ってくれるヲタクな女の子とかいませんか?

▼写真1/未整理感いっぱいの、新しく入れた本棚。70年代の少女マンガと創元推理文庫・帆船マークが並んでいます。
うちの本棚-01

▼写真2/こちらは最近部屋の模様替えで動かした本棚のひとつ。やはり未整理状態で、小学館叢書や虫プロ版石森章太郎選集、坂口 尚の著作が並んでいます。
うちの本棚-02

▼写真3/やはり模様替えで動かした本棚。こちらは手塚治虫全集、藤子不二雄ランド、永井 豪の著作がまとまっているほか、谷口ジローや白土三平といった作者の単行本が並んでいます。
うちの本棚-03

▼写真4/これも模様替えで移動した本棚ですが、少女マンガを中心に並べています。目玉はところはつえの『にゃんころりん』かなw ほかに竹宮恵子、萩尾望都、山岸涼子、倉多江美、田渕由美子、清原なつの…ああ、やっぱり一貫性がないw ほかに山田風太郎の文庫本も。
うちの本棚-04

▼写真5/写真4と同じ本棚です。マンガ文庫は現在のものではなく、初期に刊行されたもの。
うちの本棚-05

▼写真6/こちらは雑多な印象の棚。活字系の文庫本のほか、ますむらひろしの作品集や木原敏江の作品集などが。
うちの本棚-06

▼写真7/こちらも雑多な棚のひとつ。活字系では唐 十郎の単行本が並んでいます。マンガでは、やまだ紫の作品集、永井 豪の著作、あべこうじの単行本などがありますね。
うちの本棚-07

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】178回 魔女っ子メグちゃん/池原しげと

$
0
0

魔女っ子メグちゃん「うちの本棚」、アニメ作品のコミカライズを取り上げてきたシリーズも今回でいったん終了。最後にご紹介するのは,池原しげとの『魔女っ子メグちゃん』です。

最初の単行本「てんとう虫コミックス」版はプレミアのつく希少本でしたが、その単行本の内容に加え、未収録だったものを全て収録したのが、ご紹介する「イースト・プレス」版でした。

【関連:番外編 筆者のカオス本棚を初公開】

魔女っ子メグちゃん


本書はテレビアニメ『魔女っ子メグちゃん』の放映に合わせて、主に小学館の学年誌に連載された池原しげとによるコミカライズ作品を完全収録したものである。
1975年に1冊だけ刊行されたてんとう虫コミックス版はその後古書価格が高騰し、本書の帯では「一冊20万円以上」とも記されている。そんなてんとう虫コミックスの内容を完全収録した上に、これまで単行本未収録だったものをすべて詰め込んだ、ファン待望の一冊だった。

ちなみに、てんとう虫コミックスは小学館の発行であり、主に学年誌に掲載された作品を刊行するシリーズであったが、この『魔女っ子メグちゃん』は潮出版発行の「希望の友」に連載されたものをまとめている。
学年誌版は、主に低学年向けの内容になっていて、カタカナにもひらがなのルビがふられていたりするが、それまで読むことの出来なかったものがこうしてまとめられたのは「事件」と言ってもいいくらいの印象があった。
この作品の人気の高さは、主にアニメ作品の影響ではあるのだが、気軽に読めないという状況もそれに拍車をかけていたといえるだろう。

それにしても、同じ作者が同じ作品を4誌に連載していたというのは、なかなかすごいことである。それぞれ月刊誌であるからその月に放映されるアニメ版のエピソードを網羅できたのではないだろうか。

アニメ版ではキャラクター設定と作画監督を務めた荒木伸吾が、メグに、その前に担当していたキューティーハニーがダブったと言い、声を担当した吉田理保子は、そのあとに担当した『グレンダイザー』のマリアにメグがだぶったという。

本書も刊行からすでに十年以上が経過しており、こちらもプレミアがつくようになっているかもしれない。
そうそう、個人的にはメグよりノンが好きでした。

書 名/魔女っ子メグちゃん
著者名/池原しげと
出版元/イースト・プレス
判 型/B6判
定 価/1900円
シリーズ名/なし
初版発行日/2001年4月1日
収録作品/てんとう虫コミックス版、希望の友版、小学一年生版、小学三年生版、小学四年生版、描き下ろし短編

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】180回 変身忍者 嵐/石川 賢(原作・石森章太郎)

$
0
0

変身忍者 嵐「うちの本棚」、今回は石川 賢のコミカライズによる『変身忍者 嵐』をご紹介いたします。
「時代劇版『仮面ライダー』」を目指したテレビ版を、石川 賢がどのようにマンガ化したか? 時代劇+怪人、それは石川 賢お得意の分野だったりするのです。

【関連:179回 忍者キャプター/聖 悠紀(原作・八手三郎)】

変身忍者嵐-01/石川 変身忍者嵐-02/石川


本作品は特撮テレビ時代劇『変身忍者 嵐』のコミカライズである。連載は秋田書店の「冒険王」と「別冊冒険王」で、最終回エピソードが2種類描かれた。
大都社からは本書刊行後、未収録話を含めて『変身忍者 嵐外伝』として再刊行されている。未収録の理由は原稿紛失だと思われるが、本書でも最終2話は印刷物からの復刻となっている。

テレビ作品の方は「時代劇版『仮面ライダー』」を意図していて、当初登場する化身忍者も初期の『仮面ライダー』を彷彿とさせる雰囲気である。もっとも裏番組が『ウルトラマンA』であったため試聴率的には苦戦したようだ(自分も『ウルトラマンA』を観てました)。

石川 賢のコミカライズはテレビ版にそった内容であると共に、ダイナミック・プロらしいアクションやインパクトのあるシーンがふんだんに描かれている。また、テレビ作品のコミカライズではあるが、石川作品らしい個性も出ていて、初期の石川作品の代表作のひとつと言っていいだろう。
正直なところ時代劇で嵐の造型は違和感そのものなのだが、マンガではすんなりと受け入れられる。ちなみに本書刊行の際に描き下ろされたと思われるカバーイラストも素晴らしいのひと言に尽きる。

初出:秋田書店「冒険王」1972年5月号~1973年3月号、72年夏の増刊号、73年お正月増刊号、「別冊冒険王」1972年夏季号~1973年春季号

書 名/変身忍者 嵐(全2巻)
著者名/石川 賢
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/各540円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/昭和61年6月30日(一、二巻とも)
収録作品/第一巻・ネコマンダラ、死人ふくろう、吸血むかで、人食いカラス、ノミドクロ、第二巻・顔なしカワウソとキバギツネ、ドラキュラ、オオカミ男とフランケン、スフィンクスとタランチュラ、マーダラとメドーサ、モズマとワーラス、月の輪の正体、西洋怪人復活

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

【うちの本棚】182回 恐怖のミイラ/楠 高治(原作・高垣 眸)

$
0
0

「うちの本棚」、今回はモノクロテレビ時代の伝説のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズをご紹介します。作画を担当したのは楠 高治。桑田次郎のアシスタント時代には『8マン』の最終回を代筆していました。

【関連:181回 ウルトラマンタロウ/石川 賢】

恐怖のミイラ


本作はモノクロテレビ時代のホラードラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズ作品である。作画を担当したのは、桑田次郎のアシスタントとしても知られる楠 高治。楠は『遊星仮面』などのコミカライズも手がけていた。
連載は講談社の「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録。テレビドラマは全14話で、ホラージャンルのテレビドラマの先駆とも言われている。

ストーリーの概要は、考古学者の板野博士が、助手の牧村とともにミイラを復活させる薬を完成させるが、復活したミイラによって博士は殺されてしまう。またミイラは博士の娘・汀(なぎさ)を、自分の生きていたときの女王パトラと思い、何度となく汀を求めて襲ってくる。
ミイラから汀を守る板野博士の妻の弟・雄作(コミカライズ版ではこの辺の関係がイマイチ説明不足である)が主人公とも思えるが、雄作、ミイラ、汀とストーリーの進行によって視点が移っていくところもある。
単に蘇ったミイラが超人的な力で街を恐怖に陥れるというだけではない、哀愁を帯びた展開があるのもこの作品のミソ。戦前から人気のあった高垣 眸が原作を担当しているのがストーリーに深みをもたせた理由だろう。
楠の作画は、初期の桑田次郎と言われたら信じてしまいそうなくらい似ているが、人物の描写(特にポーズや表情)などに漫画的な画一的なものがあって二次元的。ただコマ割りやテンポなどはよく、中だるみなく一気に読める。ラストも余韻のある感じでまとめてあるが、コマ割り的にはあっさりしていた。
併録の『ジロー』は楠のオリジナル。ウィキペディアによると『旋風児ジロー』が正式タイトルのようだ。初出は「少年クラブ」の1961年3月号。
こちらはより桑田次郎の作品に近い雰囲気。内容は当時の日本映画で流行っていた無国籍もの的な作品で、西部劇のような現代ドラマ。短編としてよくまとまっていて、佳作といえる。
原作ドラマは特撮やホラーのマニアを中心に評価も高くいのだが、そのコミカライズ版である本作は埋もれている感が強いのが残念である。

初出:講談社「少年クラブ」1961年9月号~12月号付録

書 名/恐怖のミイラ
著者名/楠 高治(原作・高垣 眸)
出版元/サン出版
判 型/新書判
定 価/450円
シリーズ名/COMIC PET
初版発行日/昭和56年10月3日
収録作品/恐怖のミイラ、ジロー、表紙ギャラリー

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

Viewing all 41 articles
Browse latest View live